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津田直 meets 川内倫子「空っぽからの歩み。光にさわる、風景をなぞる。」レポート

4 月 24 日、原宿のイベントスペース VACANT にて写真家・津田直さんと川内倫子さんによるトークショー 「空っぽからの歩み。光にさわる、風景をなぞる。」が開催されました。

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会場は大盛況で、立ち見が出るほどのにぎわい。時刻になり 2 人が登場すると、さっそく会場の照 明が落とされ、大きなスクリーンに津田さんの写真が映し出されます。暗闇にうかびあがる阿蘇の風景。 木、土、火、さまざまな自然が、途方もなく大きな力を持っているようなようすで迫ってきます。そし て、切り替わる写真に合わせて津田さん本人による詩の朗読が始まります。会場全体が、まさに「空っ ぽ」のように静まりかえり、津田さんの落ち着いた声だけが静かに響いていました。

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合わせて川内さんの写真も上映し終え、イベントはメインのトークショーへ。おふたりの出会いのきっかけや、それぞれの作品にたいする印象など、話題を変えながらどんどん話は進んでゆきます。そ のなかでも印象的だったのが、またここでも登場する「空っぽ」ということば。おふたりとも、写真 を撮っているときはまさに「空っぽ」になるそうで、体内に風景が入ってくる感覚があるとおっしゃっ ていました。極限まで集中すると、無心になっている。そういうときのほうがいいものが撮れること がある、とも。そのかわり、知らぬ間に火山口に近づきすぎていて、気付いたらカメラが溶けていたこ とがあります、と笑う津田さん。川内さんも、阿蘇の野焼きを撮っていたら、気付いたら四方を火に囲 まれていて死を覚悟しましたとおっしゃっており、その集中力の程度の甚だしさに驚かされました。  また、カメラは「こわい」というお話も何度もされており、こちらも印象的でした。今述べたように 完全に無心になってしまうことや、あるはずのないものが「写って」しまうこと。そして川内さんはと くに、使用している二眼カメラの機能上、上から被写体を覗くことになり、まるで世界を見下ろしてい るかのようで「こわい」と。しかしこの「こわい」は、恐怖ではなく、一種の畏怖のようなものを指 すのだと感じました。人知を超えたカメラの力。それを知っているからこそ、畏れ敬っているからこそ、 おふたりの写真は非常に魅力的なものになるのだろうと思います。

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休憩をはさみ、後半はふたりが共通して撮影したことのある銀鏡神楽(しろみかぐら)のエピソード に。実際におふたりが撮影した写真がスクリーンに映し出されます。銀鏡神楽とは宮崎県西都市に伝わ る伝統的な神楽で、重要無形文化財にも指定されています。まさか銀鏡神楽の話で盛り上がれるとは 思っていなかった、とおっしゃるおふたり。神楽を撮影して感じた想いを丁寧に語り合います。それぞ れの写真は、津田さんはじっくりと被写体と対峙してその緊張感を具体的に捉えた写真。川内さんは シャッタースピードをあえて遅くし被写体が浮遊しているかのように写すことで、その神聖さを抽象的 に捉えた写真になっており、それぞれの特徴と魅力が凝縮されていました。

その後もトークショーの盛り上がりは収まらず、まだまだ話し足りないというところで時間に。最後 に観客のかたからの質問コーナーでは、「デジタルカメラをどう利用しているか」「無心になっている とき、撮影の切り上げどきをどうやって決めているのか」という質問があがりました。はじめの質問 では、川内さんはデジカメにはデジカメの良さがある。一眼レフもよく使うとおっしゃっており、津田 さんも機能を選びながらデジカメは使っているとおっしゃっていました。けれど、お互いやはりフィル ムの質感に惹かれるそうで、「一度(現像をする際に)水を通したフィルム写真と、そうでないデジカ メ写真では質感がまったくちがう」とおっしゃっていたのが印象的でした。ふたつめの質問では、お ふたりとも「切り上げどきはない」とのこと。これでもう終わり、と思ったことはない。あるとしたら、 なにかしらの〆切に追われているときだけ。おふたりの写真にたいする真っ直ぐな姿勢が感じられまし た。

名残惜しいままイベントは終了し、夢のような一時間半が幕を閉じました。そもそも写真家が話を するという機会がすくないうえに、いまの写真界を牽引する偉大な写真家のおふたりのトークショー ということで、足を運んだかたにとっては大変満足なイベントになったことでしょう。津田さんと川内 さんには、写真においても思考においても、共通している部分がたくさんあり、非常に波長が合ってい るように思えました。明日からは、今までとはまた違った見方で、おふたりの写真を見ることができ そうです。

文責:庄子真汀

参考URL:https://www.vacant.vc/d/190

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