山内宏泰 公式サイト

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山内宏泰 公式サイト

ライター。アート、写真、文学、教育、伝記など。 著書に「上野に行って2時間で学びなおす西洋絵画史」など。 好物はマドレーヌ、おにまんじゅう。 【Twitter】@reading_photo   info@yamauchihiroyasu.jp

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【掲載中】 文春オンライン 芥川賞・砂川文次インタビュー

どこよりも早い! はずの、芥川賞受賞後インタビュー。 砂川文次さんの言葉は、小説と同様に歯応えガッツリですよ。 「リアル」じゃなくて全然いいから、「リアリティ」を…

五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝  5 強藩を揺るがす心の弱さ 20220116

 宝暦治水をひとつの事象と見た場合、幕府側からすれば「天下の暴れ河」平定の足掛かりができて、満足いく結果を得たと言える。  実務はすべて薩摩藩に丸投げだから、懐…

「みかんのヤマ」 28 学びの効用 20220116

 中井先生は公立施設で心療内科の先生をしているのだとか。かつて患者として関わった人に、城下の公園での「朝活」に熱心な向きが多くて、これは心身にいい場所に違いない…

「みかんのヤマ」 27 ヨガと心の先生 20220115

 安心できる場で、ただぬくぬくしていたい。小さいころのわたしの願いは、それに尽きた。なのに父は、ちっともわかってくれなかった。よかれと信じて、いつもわたしを外へ…

五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝  4 宝暦治水は美談か  20220115

 かように今際の際まで当人が戸惑っていたことからわかる通り、薩摩の人・平田靫負は生涯にわたり、それこそ自害するそのときに至るまで、失敗し続けた男だった。  だが…

五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝 3 腹を裂く理由  20220114

 知らず止めていた息を吐く。と平田は、室の異変に気づいた。  生臭い!  くさいのは息か、血の匂いか。違う、己の全身だ。  毛穴という毛穴から、嫌なにおいが立ち上…

【掲載中】 文春オンライン 芥川賞・砂川文次インタビュー

【掲載中】 文春オンライン 芥川賞・砂川文次インタビュー

どこよりも早い! はずの、芥川賞受賞後インタビュー。
砂川文次さんの言葉は、小説と同様に歯応えガッツリですよ。
「リアル」じゃなくて全然いいから、「リアリティ」を小説に植え付けんとする強い意思。しびれる。 #芥川賞 #砂川文次 #ブラックボックス
〈芥川賞受賞〉「エッセンシャルワーカーを ”保護する”というニュアンスに違和感があって…」 砂川文次が『ブラックボックス』に書き込んだ“怒り”のパワー

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五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝  5 強藩を揺るがす心の弱さ 20220116

五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝  5 強藩を揺るがす心の弱さ 20220116

 宝暦治水をひとつの事象と見た場合、幕府側からすれば「天下の暴れ河」平定の足掛かりができて、満足いく結果を得たと言える。

 実務はすべて薩摩藩に丸投げだから、懐ひとつ痛まないのだし。

 では薩摩藩から見た、宝暦治水の意味は?
 そもそも縁もゆかりもない地の治水に借り出されたのは、幕府の一方的な命による。外様・薩摩の力を削ぐ方策だったのは明らか。
 本来、薩摩藩がそんな無理難題を引き受ける大義や

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「みかんのヤマ」 28 学びの効用 20220116

「みかんのヤマ」 28 学びの効用 20220116

 中井先生は公立施設で心療内科の先生をしているのだとか。かつて患者として関わった人に、城下の公園での「朝活」に熱心な向きが多くて、これは心身にいい場所に違いないと、様子を見に来るようになった。

 スタバではひたすらニコニコして座っているばかりだったけれど、著作もあって立派な先生だと周りから大いに囃し立てられていた。こんど読んでみる。

 この朝の出会いから、わたしのルーティンは項目が増していった

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「みかんのヤマ」 27 ヨガと心の先生 20220115

「みかんのヤマ」 27 ヨガと心の先生 20220115

 安心できる場で、ただぬくぬくしていたい。小さいころのわたしの願いは、それに尽きた。なのに父は、ちっともわかってくれなかった。よかれと信じて、いつもわたしを外へ連れ出そうとした。

 思えばいまも同じだ。父がみかん山でトロッコから転げ落ちて死んだ、そのことをきっかけにわたしも、みかん山を出てさ迷う羽目になった。山のふもとでぬくぬくなどしていられなくなった。
 何かを得たいなら、自分から動きなさい。

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五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝  4 宝暦治水は美談か  20220115

五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝  4 宝暦治水は美談か  20220115

 かように今際の際まで当人が戸惑っていたことからわかる通り、薩摩の人・平田靫負は生涯にわたり、それこそ自害するそのときに至るまで、失敗し続けた男だった。

 だが伝え残る話では、そうなっていない。薩摩と美濃の郷土史を彩る「宝暦治水」、この出来事の中心人物として語られる平田靫負は英傑だ。ゆかりの地に銅像が立ち、顕彰され続けている。

 宝暦治水とは、江戸中期におこなわれた大規模治水工事のこと。
 一

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五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝
3 腹を裂く理由  20220114

五十年間失敗し続けた男 平田靫負伝 3 腹を裂く理由  20220114

 知らず止めていた息を吐く。と平田は、室の異変に気づいた。
 生臭い!
 くさいのは息か、血の匂いか。違う、己の全身だ。
 毛穴という毛穴から、嫌なにおいが立ち上っている。

 我ながら不快な。においを避けようと、身じろぎした。その拍子に短刀が腹をぐいと食み、切先は弾力ある筋繊維に潜り込む。
 溢れる血の勢いが増した。下腹部全体が朱色に染まっていく。

 い、痛いではないか!
 これは、大ごとだ!

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